アンティーク シャルル9世 ストーンカメオ ゴールド プラチナ ネックレス

ハードストーンを用いたカメオアビエのネックレスです。

カメオ アビエ(Cameo habillé)、"habillé" は
「着せた、包装した」の意のフランス語、その名の通り
陽刻部分を宝石や金属で装飾したカメオを指します。

カメオアビエといえば多くは、例えばシェルカメオの女性の
胸元や、黒い肌の人物をダークカラーの層で表現した
ブラッカムーアカメオの髪に、きらきらと輝く宝石類を
あしらったジュエリーを想像します。

しかし過去に世界的なオークションハウスで扱われた同種の
カメオがそう呼ばれるように、ハードストーンと、眩いばかりの
金色、白色の金属のみで構成された大変めずらしいこちらの
作品もまた、カメオアビエなのです。


印象的な襞状の襟、豪奢な衣服、16世紀半ば頃の特徴を示す
衣装に身を包む人物は、アンリ2世を父に、カトリーヌ・ド・
メディチを母に持つフランス王シャルル9世(1561年〜
1574年在位)。
その姿は大英博物館の所蔵品、1573年Germain Pillon作の
メダルに描かれており、同作をモデルにしたものと考えられます。

白く滑らかな石肌に刻まれた精悍な面差し。
羽根飾りのついた帽子と衣服はゴールド、そして襟の部分には、
本格的にジュエリーに使用されるのは1900年代初頭以降となる
プラチナが使われています。
この作品はそれ以前に製作されたと考えられるため、とても
めずらしい使用例です。

ゴールドの部分には、少々の赤みを帯びたローズゴールドと
イエローゴールドとが使い分けられています。
特筆すべきはその彫りの種類の豊富さと緻密さです。
この時代の上衣には、シルクやビロードなどの生地に詰め物を
して厚みを持たせたものが多いといいます。
豪華な織り、刺繍、滑らかな手触りやそのずっしりとした
重さまでもが伝わってくるようです。


このカメオの持ち主は、一体どのような人物だったのでしょうか。
作品の納められたケースには

Murphie Bros Ltd.
Jewellers,
90,Grange Road,
Birkenhead,
Est.1849-tel.88**(二桁不明)

の記載があり、1849年創業のイギリスのジュエラー、
Murphie Bros社にて製作、クオリティーの高さからいって
注文品だと考えられるでしょう。

王の衣装だけではなく、ネックレスチェーンもプラチナと
ゴールドを合わせ連ねた繊細なものです。
これほどの凝ったデザインで貴重な素材を惜しみなく使い
作らせることのできる、相当な地位と財力を保持する人物で
あったのではないでしょうか。


16世紀頃には、古代ローマやギリシャのカメオの欠けた部分を
金で補い、彫刻を加え一つの作品とした例も見られます。
おそらくその技法は、オニキスに、細やかな彫りを施した
ゴールドとプラチナを纏わせた本作にも多大な影響を
与えていると推測できます。

ジュエリーとしての見事な出来栄え、なかなか市場で目に
する機会のない高い稀少性のみならず、ヨーロッパ各国に及ぶ
壮大な歴史をその背景を通じ私たちに想起させる、まさに
芸術品と呼ぶに相応しい作品です。

人物の耳前辺りに見られる一筋の浅いヒビは、作品の強度、
美観に影響のない程度と考えます。

年代  1800年代後期〜1900年頃
国   イギリス
素材  オニキス ゴールド プラチナ
サイズ トップ部分約3.4cm×2.8cm チェーン長さ約40cm

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型番 gj21040
販売価格
1,980,000円(税込)
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